初夜篇


 「久し振りにゲームやらないか?」

 友達みたいに、 いや、 友達として、 土門は一之瀬を誘った。

 告白篇であんなことがあったけれど、 ふたりの関係は友達以上に進展はしていない。

 元々どうこうなりたいとかじゃなく、 ただお互いを好きってだけで告白し合ったのだから、 普通かもしれない。

 というかふたりの頭はお互いが1割、 サッカーが9割を占めている。

 そうは言ってもゲームまでサッカーではなく、 レーシングゲームだった

 (サッカーゲームだと実際にサッカーがやりたくなってくるから)。

 軽く頭を使うゲームでは土門に勝ち目はない。

 土門もバカじゃないにしても、 一之瀬が頭良すぎる上に運が良いから、 いつもなかなか勝てない。

 ゲームは白熱し、 つい身体も左右へ揺れた。 意味もないのに。

 「これ勝ったほうが負けたほうに1回だけ言うこと聞かせるっていうのどう?」

 「おまっ、 勝ちそうな時にそんなこと言うなよっ」

 結局大逆転もできず、 一之瀬が勝って土門が言いなりになることとなった。

 承諾しなければ良いのに、一之瀬に甘い土門だった。

 「で? 何がお望みですか?」

 ベッドに仰向けに倒れ、 一之瀬の命令を待つ、 従順な土門。

 一之瀬はそのベッドに突っ伏し、 土門をじっと見ながら言った。

 「しよう」

 暫くの沈黙。

 土門は半分身を起こして一之瀬と目を合わせた。 土門の口は開いている。

 暫くの沈黙の後、 開いてる口が動いた。

 「訊いても良いか?」

 「何?」

 「何を?」

 「何って、 セッ――」

 「やっぱ言わなくて良い!」

 薄々思ってたことがアタリだと分かった土門は、 答えを最後まで聞かなかった。

 「なんだよ。 自分から訊いたくせに」

 「お前がしたいことが頭文字で解ったんだ」

 「頭文字出なきゃ解んなかったの?」

 「……確認だよ」

 土門は完全に起き上がり、 ベッドの上で胡坐をかいた。 顔は真剣。

 「つか、 本気なのか?」

 「本気だよ?」

 一之瀬は平然とした顔でさらっと言った。

 ベッドに上がった一之瀬は土門に顔を近づける。

 「土門に拒否権ないの解ってるだろ?」

 一之瀬に肩を押され、 土門は再び仰向けとなった。

 「ちょっと待てまた確認なんだけど!」

 「何?」

 「……俺が攻めだよな?」

 一之瀬は吃驚した顔を見せた。

 「なんで? 俺だろ?」

 「俺のほうが背ェ高いし一之瀬のほうが可愛いし! 俺が攻めだろ?」 

 「関係ないだろ背とか顔とか。 大体名前ならお前のほうが可愛いだろう? 飛鳥」

 顔可愛いは否定しない一之瀬。

 名前を呼ばれた土門は少し失速した。

 呼ばれ慣れていない名前を呼ばれると変な感じ……。

 「あっそこ言うのか気にしてんのに……って名前の可愛さのほうが関係ないだろ!」

 「じゃあ、 何で受け攻めって決まるのさ?」

 「……需要? とか?」

 「はぁ?」

 「や、 誰も俺の喘ぐ姿なんて見たくないだろ」

 「別に誰にも見せないだろ !?  というか、 俺が見たい !! 」

(コイツ……!)

 土門は本気で受けが嫌で、 一之瀬の胸倉を掴んで引き寄せた。

 「俺の下で見ない?」

 「……こればっかりは譲れないな」

 ふたりして薄ら笑いを浮かべ、 唇を重ねた。 お互い譲らないという意思を示しつつキスをした結果、 長く濃厚になった。

 「俺が攻めでしようって言えば良かった」

 「もう遅いから」

 「っあ、 おい!」

 土門が一之瀬の首にキスしたことにより、 流れで今回は (?) 土門が攻めになった。

 因みに作者は一之瀬を攻めにする気はありません。




「……次は俺だからな」

「それはどうかねぇ?」




2009/06/29

受け攻めは個人の趣味で決まりますが、 私の趣味はへたれ攻めとS受けです (ぇ)。