「影野ってさぁ、 なんでそんな存在感ないの?」
松野空介ことマックスは、 ズバッと失礼なことを訊いた。 これがマックスが最初に影野に喋りかけた台詞だった。
「なんでって、 言われても……」
マックスの言葉に特に傷ついてもいない影野はボソボソと返す。 質問の答えは返せていないが。
「あ、 ごめん。 ハッキリ言い過ぎた?」
あんまり謝ってる態度には見えないが、 マックスは一応謝った。
「平気……」
影野が斜め上を向いて暫く考えてると、 その間無言になった。
やがて首を傾げながらも、 導き出した答えをマックスに伝える。
「多分……遺伝? じゃない、 かなぁ……」
「両親とも存在感薄いってこと?」
「自分じゃ、 よく、 分からないや……」
「ふーん。 そんなもん?」
そこへ、 半田が会話に加わった。
「っはよー。 珍しいな。 影野と松野が喋ってるなんて」
「そりゃーね。 初めて喋ったし」
「えっ。 お前、 何ヶ月一緒にサッカーやってると思ってるんだよ」
「だって俺お前が影野と喋ってるとこ見なかったら影野の存在に気付いてなかったし」
「お前……いくらなんでもそりゃ酷いだろ……」
「だって事実だしなー」
「影野も、 あんまり酷いって思ったら酷いってちゃんと言えよ? 松野ってズバズバ思ったこと言うヤツだから」
やっと影野が会話に入れそうに話題を振ってくれた半田。
けれど、
「半田酷ーーーい」
マックスが話題を浚う。
「お前が言うなっ!」
影野はふたりの漫才が面白くて、 つい笑い声が漏れた。
ふたりはそれに気付いて影野を見た。
「影野って、 笑ったほうが存在感出るかもな」
「え……」
「なんか、 違う意味でじゃない? それ」
「違う……意味?」
マックスの言葉の意味が解らなかった影野は素直に訊いた。
「怖――」
「あーーー !!! 深く気にしないで良いからっ、 なっ! 影野!」
マックスの酷い発言を、 半田は大声で掻き消す。
影野は解らないまま頷いて、 深く気にしないようにした。
そこへ、 授業開始のチャイムが学校中に鳴り響く。
「やばっ」
「また放課後な影野!」
それぞれの教室へ走り出そうとした時、 影野が口を開いた。
「喋り掛けてくれてっ! ……ありがとうっ」
マックスはその言葉をちゃんと耳に入れ、 口元を緩ませた。
「どういたしまして」
2009/07/27
こうして友達になりましたとさ (ぇ)。
つか、 土一に比べてこの適当さよ (笑)。